樹木希林

樹木希林は文学座の出身の女優です。
文学座と言えば杉村春子を思い浮かべますが、杉村春子も樹木希林もぶすと言う点では同じですが、芸風はまるで逆と言うか、両極に分かれるものです。
正直杉村春子と樹木希林を比較するのはお恐れ多い事ですが、個性的という意味では、樹木希林も杉村春子に負けるものではありません。
ただ杉村春子の演技は、剃刀で寸分の隙もないほど計算し尽くされたものですが、樹木希林の演技は、アドリブ主体です。
樹木希林のTVドラマのデビューは『七人の孫』で、変わった女中の役柄でしたが、主人公のおじいさん役の森繁久弥の影響もあってか、森繁久弥の芸風に近いものを感じます。
森繁久弥に比べれば、樹木希林のほうがよほど台詞に忠実とはいえます。
樹木希林は『時間ですよ』でブレークしたと言えますが、脚本が橋田壽賀子や向田邦子が揃っていて、演出が久世光彦ですから、今ではテレビドラマの世界では超大物のスタッフだったわけです。
主演の森光子も今では舞台を中心にした大女優ですから、この番組の凄さがわかると言うモノです。
その後『寺内貫太郎一家』や『ムー』、『ムー一族』などに出演し、独自のキャラクターで、女優として不動な地位をえるのですが、若い時から老け役をやっているという点では北林谷栄と共通する部分を持ち合わせていますが、今井正監督の『キクとイサム』の時には、 北林谷栄は老け役になるために歯を全部抜いたそうですが、そこまでの迫力は、樹木希林にはありません。
TVドラマ中心で、作品や監督に恵まれなかった事は、樹木希林にとって不幸な事ですが、1980年の鈴木清順監督の『ツィゴイネルワイゼン』や『ピストルオペラ』などで、存在感のある脇役振りを遺憾なく演じているところは、さすがです。
最近の樹木希林の出演作は、彼女の年のせいもあって数は少なくなっているモノの、作品の質は高く、バラエティに富んだものと言えるでしょう。
佐々部清監督の『半落ち』では、中島哲也監督の『下妻物語』、せんぼんよしこ監督の『赤い鯨と白い蛇』、リリー・フランキー原作の『東京タワー 〜オカンとボクと、時々、オトン〜』など、サイドプレーヤーとして、主役以上の存在感を感じさせる演技は、樹木希林でしか出せない味と言えるでしょうが、網膜剥離や乳がんを患っているにもかかわらず、精力的な映画への出演は積極的です。
今までの集大成とも言える樹木希林の演技には、それこそ鬼気迫るものを感じます。