小林聡美
小林聡美が1979年、武田鉄矢の『3年B組金八先生』でデビューしていた事を知っている人は少ないでしょう。
1982年の大林宣彦監督の『転校生』で主演に抜擢され、注目を浴びるようになりました。
小林聡美はとても器用な役者で、コミカルな演技から、シリアスな演技まで、幅広い役柄をこなす才能豊な女優ですが、当初はTVドラマばかり出演して、女優としてのキャリアが疎かになっていたきらいがあります。
1988年のフジテレビの『やっぱり猫が好き』で主演の恩田きみえ役を演じましたが、深夜番組のコメディ番組としては異例の高視聴率を維持しましたが、このとき結婚相手となる三谷幸喜が脚本を書いていました。
『やっぱり猫が好き』は小林聡美ともたいまさこ、室井滋の3人姉妹が織り成すコント紛いのドラマで、三谷幸喜にとっても初期のヒット作と言えました。
共演者は当初もたいまさこと、森下愛子でしたが、森下愛子が急病で降板して室井滋に替わりました。二人とも小林聡美に負けず劣らず芸達者で、人気が高く、深夜番組から、ゴールデンタイムにうつされ、2シーズンを数え、『やっぱり猫が好き殺人事件』などのスペシャル版も製作され、DVD化もされています。
更に毎年のように『やっぱり猫が好き』のスペシャル版が単発で製作されています。
これだけイメージが固定されると、小林聡美も女優として悩んでいたようで、その間も作品的に恵まれなかった事もあり、『やっぱり猫が好き』が仇となっていました。
それに反して夫の三谷幸喜は絶好調で、TVドラマに止まらず、舞台や映画と、活躍の場を広げていきました。
結局のところ小林聡美が『やっぱり猫が好き』の呪縛から解き放たれるためには、2006年の『かもめ食堂』まで待たなければなりませんでした。
『かもめ食堂』と言うよりは荻上直子監督との出会いと言ったほうが正確で、荻上直子監督によって、小林聡美の正しい女優としての進化が促されたと言えます。
荻上直子監督も『やっぱり猫が好き2005』を書いた関係で、小林聡美と知り合ったわけで、ほとほと小林聡美は『やっぱり猫が好き』から離れられないと言えますが、『かもめ食堂』は『やっぱり猫が好き』とは異質なコメディです。
日本初のオールフィンランドロケで、まるでドキュメンタリータッチで、淡々と登場人物を描き出し、えもいわれぬ可笑しさを醸しています。
実力のある女優をとる演出は秀逸で、小林聡美も魅力的でした。続く『めがね』も好調ですが、小林聡美も一皮剥けた感があります。